新しい研究
NAOYA OHKAWA
新しい研究
NAOYA OHKAWA
夜明け前の海に雷が落ちるのを見た。その日から、新しい研究をはじめた。
小高くなった砂浜に車を停めて、夜の海を眺めていた。朝焼けの写真を撮るために、手暗がりでフィルムを装填した。潮騒に合わせて白い波が浮き上がり消滅するほかは、その奥にずっと暗闇が続いているだけだった。ふと雨が弱くなったのを見計らって車を降りて、カメラをかばいながら波打ち際、東の空にはやってくる朝の気配があった。ゴロゴロという低い音と、パラパラと砂と小石の擦れる波の高音。耐えるように黙って、もう少し時間が過ぎるのを待った。レインコートのフードをかぶった目線の真ん中、水平線の5mmほど上、雲がふわっと明るくなった直後に、ピンクとも青とも白とも紫とも黒とも言えない閃光が海面に向かった。
あ、とだけ声を発して、しばらく呆然とした。
あれは灯りだ。
新しいものを見つけた確信があった。
この数カ月の間に見た灯りは、撮影用の高輝度照明や、自在に制御可能なLEDライト、計算の行き届いた影を落とすストロボとも違い、不安定で荒く、エネルギーそのもののような光だった。星の光、太陽、反射する波、家々の窓、月光、火、雷。時にそれは光源で、反射光、人間を照らすのは、そういう種類の灯りだ。
雷と電気の研究は、科学者たちのするそれとは異なる。エジソンもテスラもモールスもファラデーも見つけられなかったものを発見できるかもしれない、見つけはしたもののあまり役に立たなかっただけかもしれないけれど。
ケーブルやプラグ、蛍光灯、その他いくつか買い物をして、装置をつくった。バッテリーに蓄電し、雷を見たのと同じ明け方の海に、試験用の装置一号を持って出かけた。星が綺麗、あれも灯りだ。装置の写真と、星の写真を撮る。フィルム二本撮りきったところで、最初の実験を終了した。北の空に雨雲。降り出して感電しては困る。
ケーブルの切れ端、簡易的な予想図に散らかる部屋を片付けて眠った。
寝室のレースカーテンから朝の光、外では雨が降っている。
新しい研究の成果、窓を開け放って、あとは雨が止むのを待つだけ。
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4/60
60.30.125
125.60.30
250.125.60.30
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15.20.10.30
15.
20.
30.
10.15.30.15
20.10.5
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新しい研究
NAOYA OHKAWA